『あなたに降る夢』全盛期前、アクのないさっぱりと口当たりのいいニコラス・ケイジ。
『あなたに降る夢』
It Could Happen to You
1994・米
アンドリュー・バーグマン
ニコラス・ケイジ
あらすじ:宝くじが当たったので、チップで200万ドル差し上げます。
ザックリと感想を
素敵なお話です。宝くじが当たってその賞金を山分けした男女の実話をもとに作られたお話。
90年代の映画らしい、紋切型で魅力的な登場人物たちがハッピーエンドに向かっていく安心感の塊みたいな映画になっています。
今見ると毒気がなさすぎたり、悪役がただの悪役一辺倒だったりといかにもハリウッド映画らしい作劇ながらも、観客を心地よくさせることに細部まで工夫が行き届いていて、いい映画を見たと満足感がありました。
全盛期前のみずみずしいニコラス。
製作は、1994年。
ニコラス・ケイジはこの2年後にオスカーを獲得し超大作にも連続で出演するスターになる。その手前の作品。
一時期やりすぎ演技で話題になった彼だが、本作ではひたすらに作風に合わせた堅実ないい人の演技をしている。もちろん無条件でのいい男といった風貌ではないため、不器用で人のいい人物として魅力を振りまく。
デートでローラーブレードで遊ぶ場面。うまいこと滑れないニックはそのまま池に落ちる。不器用さがそのまま魅力につながるいい場面だ。
監督の前作『ハネムーン・イン・ベガス』につづいて、再びのタッグ。ニックはストイックな演技アプローチを追求していたが、『不機嫌な赤いバラ』のコメディ演技の延長として、軽妙な役柄をやってみたいと思っていた。
そんなときに、バーグマンから本作に誘われ、いい人役に徹することになる。監督からの注文は、ジェームズ・スチュワート風。注文通りに演じながらも、ニックはただのいい人は演じたくなかったようで、“いい人すぎる役”として役作りしたそうだ。
名著『ハリウッドの野性』より。
実話の方が味付け、あくまで素敵なおとぎ話。
実際に、400万ドルの当選金を警察官とウェイトレスが分け合うという話はあった。しかしそれはアイディア程度で大幅な脚色がされている。二人の恋愛劇や、クライマックスの展開などは完全に創作。
それによって、ただの絵空事のような話になってはいるものの、出発点が実話なので導入部に信憑性がある。そしてフィクションとして、前フリ、伏線がしっかりとしているので最後まで安心して見ていられる。
ドラマを盛りすぎて、目的がぶれている。
実話以上にドラマチックにしようとして、居心地の悪い設定が付け加えられている。
実際には、警察官の妻は当選金を別けるのを同意したらしい。
しかし本作のアレンジでは、彼の妻は最初出し渋り、最終的には守銭奴としてふるまう悪女のように描かれている。
もちろん映画として悪役は必要だけど、運命の相手じゃないからって、長年連れ添った妻と別れるのは歯切れのいい展開じゃない。
まとめると
ニコラス映画としてはそれほどアクの強い作品ではない。でもその分万人に楽しめる作品。
まさに90年代のラブストーリーとしてウェルメイドな雰囲気。離婚の流れさえ許容できれば、快い良いお話だ。
何より、脚本の流れるようなストーリー構成がとても素晴らしかった。
それと
日本語吹替え、久本雅美。
キャスティングの経緯はわからないけど、彼女はベストアクトを披露している。
原語では不可解な金切り声で話す女性だが、吹替えだと、マチャミの嗄れ声がいい感じに不快感を与えてくれる。それでいて、コメディの悪役として憎めない雰囲気を保っているのはさすがコメディ舞台役者だった。
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