『バンパイア・キッス』ニコラス・ケイジ。オーバーアクト最盛期。
『バンパイア・キッス』
Vampire’s Kiss
1988・米
ロバート・ビアーマン
あらすじ:俺はヴァンパイアになったに違いない。
伝説のオーバーアクトが見られるとは知っていたけど、レンタルも出ていないため長らく、スルーしていた作品。ニコラスオールナイト開催まえに思わずDVDを購入し鑑賞しました。
ザックリと感想を
ニコラス演技の究極系。本人いわく演技を楽しむのが演技スタイル。全編にわたって遊び倒しているニックの行き過ぎた熱演。
出ずっぱりでニックのアッパーな演技が堪能できます。反面ダウナーな演技は少ないので、熟練度よりも活きの良さが堪能できます。
ただし、オーバーな演技も、人物として、お話としての必然性があるのでそれほど苦も無く見れます。
ニックはおかしな演技をしてるけど、自分を吸血鬼だと思い込んでいく人、ちゃんとおかしくなっていく人の物語になっているので違和感はありません。
伝説のオーバーアクト
『バーディ』の役作りが賛否両論をよんだり、『ペギー・スーの結婚』で、声変わり前の若者を演じるため金切り声を出したりと、極端なアプローチを重ねてきたニック。『赤ちゃん泥棒』でコーエン監督の演出により、演技の制御を学んだニック。
その翌年が本作。
『赤ちゃん泥棒』で監督に抑え込まれたリビドーを一気に発散させたようなはじけるニコラスが堪能できる。
すべてが足し算、大いに怒り、大いに笑い、大いに落ち込む、上げても下げてもオーバーアクト。
吸血鬼になりたかった男
主人公のピーターは、働きづめで夜遊びもして昼夜逆転の生活をしていくうちに、自分は吸血鬼になってしまったという妄想を抱き始める。
いっぽう演じるニコラス・ケイジは、鬱屈した少年時代にコミックを読んで現実逃避し、映画ではホラーが大好きだった。なかでも吸血鬼はあこがれの存在。
のちにスーパーマンで手を組むティム・バートンとは馬が合ったに違いない。
叔父の監督した『ドラキュラ』にも出演したくて仕方なかったそうだ。
そんなニックが、吸血鬼ではなく、その妄想に取りつかれた役というのはベストキャスティング。 吸血鬼になりたくてもなれないニックはなんだか滑稽で切なくもある。
まとめると
正直言って、映画としておもしろいというよりは、ニコラス・ケイジの存在ありきで面白い作品。 でも、オーバーアクト見たさに見てみたらきっと満足できるはず。
『シャイニング』のような精神をむしばまれていくホラーのような雰囲気だけど、ニックのおかげでなんだか笑えてくる場面が多い。
DVDのパッケージにはブラックコメディとわかりやすい補助線が引いてあるのも頷ける。
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